カイゼンによる継続的改善:効果を検証する方法
カイゼンとは、現場の人々が主導する、小さな改善の積み重ねです。バリューストリームマップでカイゼンバーストを活用し、改善の成果を定着させる方法を紹介します。
カイゼンによる継続的改善とは、現場で働く人々とともに、小さな改善を積み重ねていくことです。「改善」は、より良い状態へ変えることを意味します。今井正明氏が1986年に出版した著書でトヨタ生産方式が紹介され、カイゼンは欧米の経営現場にも広く知られるようになりました。
カイゼンはチームの改善を支えますが、改善に取り組むだけでは、変更の効果は分かりません。ベースラインがなければ、プロセスがどれだけ変わったかを把握できないまま、以前より良くなったと感じるだけで終わることがあります。その結果、改善効果を説明したり、プロセスが元に戻り始めたことに気づいたりするのが難しくなります。
この方法の基本は、明確に定義された標準を出発点とすること、そして現場、つまり実際に業務が行われる場所の人々を巻き込むことです。このガイドでは、日々のカイゼンとカイゼンイベント、カイゼンバーストとバリューストリームマップを改善計画につなげる方法、プログラムが勢いを失う理由、イベントログで成果を測りやすくする方法を説明します。
カイゼンとは何か
カイゼンとは、小さな変更を継続して行い、業務を改善する方法です。実践するうえで大切な考え方は2つあります。
**標準を出発点にする。**業務が改善したかを判断するには、まず業務の進め方が定義されている必要があります。カイゼンでは標準を変更し、新しい方法を文書化して、次の改善の基準にします。標準がなければ、変更が個人の工夫にとどまり、その人が異動したときに失われるおそれがあります。
**現場の人々を巻き込む。**現場とは、実際に業務が行われる場所です。現場で働く人々は、報告書には表れない業務上の不便に気づきやすく、より良い働き方を維持するうえでも直接的な役割を担います。
5S、PDCA、ポカヨケ、カンバン、アンドンなどの手法は、こうした考え方を支えるものです。それ自体がカイゼンというわけではありません。基本となるのは、ベースラインに照らして変更を行い、その結果を確認し、効果があれば変更を定着させることです。
トヨタによるイノベーションとカイゼンの区別は参考になります。イノベーションが大きな飛躍を目指すのに対し、カイゼンは幅広い参加のもとで小さな改善を重ねます。大規模なプロジェクトではなく、方針、システム設定、フォームの変更で実現する改善も少なくありません。
日々のカイゼンとカイゼンイベントの違い
日々のカイゼンとカイゼンイベントは、目的が異なります。日々のカイゼンでは、チームの業務に改善を組み込みます。イベントでは、特定の問題に集中して取り組むために人々が集まります。
| 日々のカイゼン | カイゼンイベント(ブリッツ) | |
|---|---|---|
| 参加者 | プロセスを担うチーム | 部門横断のメンバーとプロセスオーナー |
| 期間 | 継続的。個々の変更は数分から数時間で行う場合もあります | 3~5日間の集中した取り組み |
| 対象範囲 | 1つの工程、1つの業務上の不便、1つの標準 | 目標を定めた1つの工程またはサブプロセス |
| コスト | 通常、チームの作業時間が中心です | 集中して取り組む期間における複数人の作業時間 |
| 根拠 | 変更前後の測定値 | 同じ測定値と、その結果を踏まえた判断 |
| 適した場面 | 改善の習慣を維持する | 習慣づくりを始める、または行き詰まりを解消する |
よくある誤りは、イベントを何度か実施し、それだけでプログラム全体を進めたと考えることです。イベントで目に見える変更を実現できても、それだけで継続的な習慣が生まれるわけではありません。イベント終了後も、チームが標準を担い、小さな改善を探し続ける必要があります。
バリューストリームマッピングにおけるカイゼンによる継続的改善
カイゼンバーストは、現状のバリューストリームマップに記す星形の記号です。改善したい具体的な工程を示します。カイゼンのバリューストリームマッピングでは、それぞれのバーストを、確認された問題、提案する変更、期待される結果に結びつけます。
カイゼンバーストを実行につなげるには、次のルールに沿って記載します。
- **工程を1つ:**プロセス全体ではなく、具体的な工程に結びつけます。
- **変更を1つ:**改善したい点だけでなく、変更する内容を明記します。
- **期待値を1つ:**測定可能な数値で効果を見積もります。
「待ち時間を減らす」だけでは範囲が広すぎます。「住所確認と並行して実施できるよう、与信確認の順序を変更し、この工程の待ち時間を2日短縮することを目指す」とすれば、工程、変更内容、期待される効果が明確になります。
現状のマップに記したバーストをもとに、将来の状態に向けた改善計画を作成します。それぞれの変更案には、理由と期待される結果が必要です。数値がなければ、案の評価が難しくなり、プロセス上の課題よりも、最後に発言した人の意見が反映されるおそれがあります。
バリューストリームマッピングでは、マップの内容と現状・将来の状態の関係を説明しています。各カイゼンバーストについて重要なのは、その効果をどう測定するかです。記号について詳しくは、バリューストリームマッピングの文書化をご覧ください。
カイゼンプログラムが勢いを失う理由
改善を継続しにくくする、よくある問題が4つあります。
**ベースラインがない。**チームが工程を変更する前に測定していません。後になって変更の効果を尋ねられても、記憶や個人の経験談に頼ることになります。
**新しい標準が文書化されていない。**変更が当初は機能しても、新しい方法が標準やシステム設定に反映されていなければ、プロセスが元に戻ることがあります。
**測定に手間がかかりすぎる。**手作業で時間を調査するには、サンプリングやストップウォッチの使用、業務の測定方法に関する合意が必要になることがあります。予想される効果より手間が大きいと感じれば、チームはベースラインの測定を省くかもしれません。その場合、変更を裏づける根拠が得られません。
**影響ではなく、不満の声をもとに対象を選ぶ。**データがなければ、チームは最も目立つ工程や不満の大きい工程に注目しがちです。しかし、その工程がプロセス全体で最も大きな遅延を引き起こしているとは限りません。
こうした問題があっても、チームに意欲がないということではありません。プロセスが見えにくく測定しにくいため、対象を選んだり結果を確認したりするのが難しい場合が多くあります。
イベントログはカイゼンにどう役立つか
業務がシステム上で行われている場合、システムにはケース識別子、アクティビティ、タイムスタンプなどのイベントが記録されていることがあります。これらの記録をまとめたものがイベントログです。プロセスマイニングではイベントログデータを使ってプロセスの実行状況を示し、カイゼンに伴う測定を支援できます。
**プロセスデータからベースラインを作成する。**サイクルタイム、手戻りのループ、プロセスのバリアント、アクティビティ間の待ち時間を調べられます。中央値とばらつきを見ると、標準的なケースと時間のかかるケースの違いが分かります。90パーセンタイルを確認すれば、長い待ち時間が集中する最も時間のかかるケースを把握しやすくなります。
**実際に観測された遅延をもとに対象を選ぶ。**工程ごとの待ち時間を比較すると、最も強い不満の声だけに頼らず、どこに注力するかを判断しやすくなります。
**同じ指標で変更前後を比較する。**定義と対象範囲をそろえれば、変更前のプロセスと変更後のデータを比較できます。ただし、公平な比較期間を選び、プロセスやケース構成の変化を考慮する必要があります。
**プロセスが新しい標準に従っているかを確認する。**新しい業務方法のルールを定義すると、適合性チェックによってルールに従っていないケースを特定できる場合があります。変更から時間がたたないうちに逸脱を把握し、調査しやすくなります。
プロセスマイニングはカイゼンに代わるものではありません。カイゼンの変更が役立ったかを証明するうえで、チームが特に負担に感じる手作業での測定を一部置き換えられます。プロセスマイニングを使うと、イベントログデータを調べ、プロセス内で業務がどのように進むかを比較できます。
| カイゼンの段階 | 手作業での方法 | イベントログデータを使う方法 |
|---|---|---|
| 工程のベースラインを測る | 時間調査とサンプリング | ログ内の工程時間を比較 |
| 対象を選ぶ | 不満の声や目に見える待ち行列から始める | 測定した待ち時間を比較 |
| 効果を確認する | 時間調査を繰り返す | 同じ指標を後のデータに適用 |
| 標準を維持する | 可能であればサンプルを監査 | 定義したルールに照らしてケースを確認 |
| 次の対象を見つける | 次の不満が出るのを待つ | 最新のプロセスデータを確認 |
プロセスマイニング用のイベントログ作成に必要な情報をご覧ください。
カイゼンに新しい考え方は必要ありません。必要なのは、実態に即した測定です。プロセスマイニングはカイゼンに代わるものではなく、変更が実際に役立ったことをデータで証明するという、チームが最も難しいと感じる作業を軽減します。カイゼンの進め方はそのままに、イベントログで数値を確認できます。
カイゼン、リーン、シックスシグマの比較
カイゼン、リーン、シックスシグマは、同じ改善活動を支援できますが、注目する課題はそれぞれ異なります。
| カイゼン | リーン | シックスシグマ | |
|---|---|---|---|
| 主な焦点 | 小さな継続的改善 | 業務の流れ、ムダ、リードタイム | ばらつき、不良、予測可能性 |
| 一般的な対象範囲 | 工程またはタスク | バリューストリーム | 定義されたプロジェクト |
| 主導する人 | 現場で働く人々 | バリューストリームのオーナー | 多くの場合、訓練を受けた実践者 |
| 進め方 | 継続的 | バリューストリーム全体で改善サイクルを実施 | 多くの場合、DMAICに沿ったプロジェクト段階 |
| よく使う指標 | 変更対象の工程 | リードタイム、在庫、業務の流れ | 不良、プロセスのばらつき |
| 行き詰まりやすい点 | ベースラインや標準が失われる | 局所的な改善にとどまり、全体に反映されない | 測定に手間がかかりすぎる |
多くの組織では、リーンやシックスシグマとカイゼンの習慣を組み合わせています。方法は異なりますが、どれもプロセスを測定し、変更が意図した効果をもたらしたかを確認する必要があります。各手法を詳しく比較するには、シックスシグマとはをご覧ください。
四半期でカイゼンサイクルを実施する方法
1つのプロセス、1つの工程、1つの指標に絞ると、サイクルを集中して進められます。
- **イベントログがあるプロセスを選びます。**定期的に繰り返され、アクティビティとタイムスタンプを記録するシステム上で実行される業務を探します。システムに記録されていない場合は、まず測定方法を検討します。
- **工程を選ぶ前に業務の流れを測定します。**プロセス全体の待ち時間と作業時間を測定します。データから、当初想定していたものとは別の対象が見つかることがあります。
- **カイゼンバーストを記載します。**工程を1つ、変更を1つ、数値で示した期待効果を1つ記載します。担当者と日付も決めます。
- **変更を行い、標準を更新します。**新しい業務方法を文書化するか、関連するフォームやシステム設定を更新します。個人の習慣にしか存在しない変更は、維持が難しくなります。
- **同じ定義で結果を測定します。**適切な期間を選び、同じ指標で比較します。改善が見られなかった場合も記録し、次に検証する内容を決めます。効果がなかったことを測定できた場合も、有用な情報が得られます。
- **適合性を確認し、次のサイクルに進みます。**新しい標準が守られているかを確認する方法を定義します。その後、次のサイクルで別の改善対象を探します。
各サイクルの対象は1つのプロセスに絞ります。プロセスオーナーにも測定とレビューに参加してもらい、変更のたびに専門家に頼らなくても、チームが結果を確認し続けられるようにします。
次に取り組むこと
変更を加える前に、まず1つの工程を測定します。業務がイベントログに記録されている場合、そのデータからベースラインを作成し、どのカイゼンバーストを検証するかを決められます。
バリューストリームのページでカイゼンバーストの記号を確認する。
改善手法を比較する