データ問題のトラブルシューティング

一般的なデータの問題と解決策

プロセスマイニング用にデータを準備する際、分析の正確性と品質に影響を与える可能性のある一般的なデータ関連の問題が発生することがあります。以下は、これらの一般的な問題を特定し、解決するためのトラブルシューティングガイドです。


1. イベントログ内の重複レコード

症状:
  • 同じプロセスインスタンスに対して、同じイベントが複数回表示される(同じCase ID、Activity、Timestamp)。
  • プロセスマップ内で特定のアクティビティやイベントのカウントが異常に多い。
考えられる原因:
  • システム統合の問題やログエラーによりデータが複数回記録された。
  • データ取り込みプロセスでイベントが意図せずに繰り返されている。
解決策:
  • 重複を削除: データクリーンニングツールを使用して重複エントリを特定し削除します。ExcelやGoogle Sheetsでは「重複の削除」機能を使用します。データベースを使用する場合は、ケースID、アクティビティ、およびタイムスタンプに基づいて重複するエントリを削除するSQLクエリを書きます。
  • 取り込み時にフィルタリング: データを取り込む際に、プロセスマイニングツールに一意のイベントのみがインポートされるようにフィルタを設定します。

2. タイムスタンプの欠落

症状:
  • 不完全または欠落したタイムスタンプが、イベントの正確なシーケンス化を妨げる。
  • プロセスマップがアクティビティ間のギャップや接続の欠落を表示します。
考えられる原因:
  • すべてのアクティビティにタイムスタンプを記録しないシステムがある。
  • タイムスタンプで追跡されていない手動プロセスや非デジタルタスク。
解決策:
  • 欠落タイムスタンプの推定: 可能であれば、既知のデータポイントに基づいて欠落タイムスタンプを推定します(例:タスクが前後のタスク間の平均時間を要したと仮定します)。
  • 手動データで補完: 手動または非デジタルタスクの場合、他のソースの推定やログに基づいてタイムスタンプを手動で入力します。
  • データ推補: 他のシーケンス内のイベントや平均プロセス期間に基づいて欠落タイムスタンプを予測するなどのデータ補完技術を使用します。

3. 一貫性のないケースID

症状:
  • 同じプロセスインスタンスに属するイベントが異なるケースIDに分割され、プロセスモデルの断片化を引き起こします。
  • 同じプロセスインスタンスの複数の表現があり、混乱や不正確な分析を引き起こします。
考えられる原因:
  • 異なるシステムや部門がケースIDに対して異なる命名規則や構造を用いている。
  • データ入力のエラーやシステム間でのフォーマットが不一致している。
解決策:
  • ケースIDマッピング: システム間でケース識別子を統一するためのケースIDマッピング戦略を開発します。ETL(Extract, Transform, Load)プラットフォームやSQLなどのツールを使用してケースIDをマージし標準化します。
  • データ変換ツールを使用する: ケースIDが異なるフォーマットを持つ場合、データ取り込み前に一貫したフォーマットに変換するための変換ツールを使用します。

4. 不正確なアクティビティの順序

症状:
  • イベントが順序を外れて表示される、例えば、後のアクティビティが前のものの前に表示される(例:「注文完了」が「注文された」より前に表示される)。
  • プロセスマップが不合理なフローやループを表示します。
考えられる原因:
  • タイムスタンプが誤って入力されたか、欠落している。
  • データは正しい順序なしに取り込まれた。
解決策:
  • タイムスタンプでソート: 各ケースIDに対してイベントがタイムスタンプで昇順にソートされていることを確認します。Excel、SQL、またはPandas(Python)などのツールを使用してデータを正しくソートします。
  • タイムスタンプフォーマットの確認: すべてのタイムスタンプが同じフォーマットとタイムゾーンであることを確認します。すべてのタイムスタンプを共通フォーマット(ISO 8601 など)に変換します。
  • データ品質の検証: 手動で数例をスポットチェックし、イベントが正しい順序で並んでおり、データ入力または取り込み中にシーケンスエラーが発生していないことを確認します。

5. システム間のデータ不整合

症状:
  • 同じプロセスに寄与する異なるシステム間でのデータ不一致。
  • あるシステムのデータにイベントが表示されるが、別のシステムに欠落していて、プロセスマップにギャップが生じます。
考えられる原因:
  • 異なるシステムで同じイベントに異なるメトリクスや命名規則、フォーマットが用いられている。
  • データ抽出が不完全、またはシステム統合が部分的である。
解決策:
  • データの標準化: 取り込み前に、主要フィールド(ケースID、アクティビティ名、タイムスタンプなど)が異なるシステム間でどのように表現されるか標準化します。データ変換ツールを使用してフィールド名とフォーマットの一貫性を確保します。
  • データセットの慎重な統合: ETLツールを使用して複数のシステムからデータをマージし、統合されたデータセットが整合性のある構造を持つことを確認します。データセットを統合する前に、イベント名、タイムスタンプ、ケースIDの一貫性を確保します。

6. 大量データによるパフォーマンス問題

症状:
  • プロセスマイニングツールで大規模なデータセットをロードまたは分析する際にパフォーマンスが低下する。
  • データ取り込み中にシステムがクラッシュしたり、タイムアウトが発生したりする。
考えられる原因:
  • データセットにシステムが効率的に処理できる以上のレコードが含まれている。
  • プロセスマイニングツールが一度に大量のデータを処理できない。
解決策:
  • データサンプリング: データセット全体を処理するのではなく、代表的なデータサンプルを使用します。これにより、サイズを減少させながらも有用なインサイトを提供できます。
  • 不要なイベントをフィルタリング: プロセスマイニングツールにデータをロードする前に、低価値または無関係なイベント(システムログエントリなど)を削除します。
  • インクリメンタルデータロード: データを一度にすべて取り込む代わりに、データの小さなチャンクを順次ロードして個別に分析します。

7. 無関係またはノイズデータ

症状:
  • プロセスマップがコアプロセスに関連しないイベントで混雑する。
  • 無意味なバリエーションが多すぎて、主要なインサイトに集中しにくくなる。
考えられる原因:
  • バックグラウンドのシステムイベント、システムログ、または関連のないタスクがデータセットに含まれています。
  • 低優先度のタスクやシステムプロセスのノイズ。
解決策:
  • 不要なイベントをフィルタリング: 分析対象のプロセスに寄与しない無関係なイベントを除外します。例えば、システムログのイベントやビジネスワークフローの一部でないアクティビティを削除します。
  • 低レベルイベントのグループ化: 必要に応じて、低レベルのシステムイベントを高レベルのアクティビティにグループ化または集約してプロセスモデルを簡略化し、コアアクティビティに焦点を当てます。

8. アウトライヤーの処理

症状:
  • プロセスマップが、典型的なパフォーマンスと一致しないタスク持続時間やリソース配分の極端な変動を示す。
  • 分析が稀なケースや例外的なケースによって偏っている。
考えられる原因:
  • アウトライヤーデータポイント(例えば、異常に長い時間を要したタスクや異常なパターンを持つケース)がデータセットに含まれている。
  • 辺縁ケースや希少なインシデントがプロセスマップに不均衡に影響を与える。
解決策:
  • アウトライヤーの特定: 統計分析を使用して、タスクの持続時間、リソース使用量、その他のメトリクスに基づいてアウトライヤーを検出しフラグを立てます。
  • 包含または除外の決定: これらのアウトライヤーが有用なインサイトを提供するかどうか(例:稀であるが重要な問題の特定)を評価し、標準プロセスに焦点を合わせるために除外するかどうかを決定します。除外する場合は、決定をドキュメント化して明確さを確保します。

9. データ内の非整合なタイムゾーン

症状:
  • シーケンスで発生するイベントが、異なるタイムゾーン設定によって不整合に見える。
  • タイムゾーンの不一致により、プロセス持続時間の計算が不正確になる。
考えられる原因:
  • 異なるシステムや部門からのデータが異なるタイムゾーンを使用している可能性があり、タイムスタンプデータが一貫しない状況になる。
  • データ取り込み前にタイムゾーンが標準化されていない。
解決策:
  • 共通のタイムゾーンに変換: データをインポートする前に、すべてのタイムスタンプを一貫したタイムゾーン(例:UTC)に変換します。ExcelやPythonを含む多くのツールがタイムゾーン変換機能を提供しています。
  • タイムゾーン調整を記録: 各データセットの元のタイムゾーンを記録し、実施した変換をドキュメント化します。

10. バランスの取れていないイベントログ

症状:
  • 一部のケースにはイベントが少なすぎ、他のケースには多すぎるため、不均衡なプロセスマップになる。
  • データ分布の不均一により、特定のアクティビティやケースが分析を支配する。
考えられる原因:
  • データの記録が不一致であるか、特定のケースでイベントのキャプチャが不完全である。
  • 一部のプロセスインスタンスが過剰に表現されているデータの偏り。
解決策:
  • イベントログの正規化: 各プロセスインスタンスが類似した詳細レベルを持っていることを確認します。特定のケースで重要なイベントが欠落している場合、その原因を調査し、手動でギャップを埋めるか、それらのケースを分析から除外します。
  • データの重み付け: 必要に応じて、イベントやケースを重み付けして、過剰に表現されているケースが分析に不均衡に影響を与えないようにします。

結論

データの品質はプロセスマイニングの成功に不可欠です。一般的なデータの問題を特定し対処することで、分析が正確で実用的なインサイトを提供することを確実にします。データ洗浄、準備、検証におけるベストプラクティスを実施することで、一般的な落とし穴を避け、プロセスマイニングの効果を最大限に引き出すことができます。