プロセスマイニングで見つける、業務自動化の機会
プロセスマイニングで自動化の候補を見極め、対象となる作業量を見積もる方法と、RPAが適さないケースを判断する方法を解説します。
このガイドでわかること
このガイドでは、プロセスマイニングを使って業務自動化の機会を評価する方法、RPAが適する場面、事前のマイニングなしで自動化を判断できる場合について説明します。
プロセスマイニングで業務自動化の機会を見つける方法
プロセス自動化は、どの作業をボットに任せるかだけでなく、どの業務を変えるべきかを見極める判断です。プロセスマイニングを使えば、業務の実際の流れを可視化し、自動化候補の作業を定量的に評価して、自動化が適しているかを確認できます。作業を再設計すべきか、現状のままにすべきかも判断できます。
有力な候補は、発生頻度が高く、手順が一定で、無視できない時間がかかる作業です。頻度、標準化の度合い、件数、処理時間を使うと、候補を具体的に絞り込めます。例外率からは、その作業のうち自動化した経路に沿って処理できる割合を見積もれます。
自動化への期待と、現実的な見極め
「プロセスマイニング RPA」で検索すると、プロセスマイニングが自動化の当然の第一歩であるかのように紹介するベンダーのページが数多く見つかります。主張は単純です。プロセスを可視化し、繰り返しの多いタスクを見つけて、ボットに任せるというものです。
この説明では、大切な点が抜けています。自動化の候補としてすぐに思い浮かぶ業務は、すでに把握されていることが少なくありません。たとえば、財務チームはシステム間で請求書データを転記していることを知っています。サポートチームも、同じ種類の問い合わせを手作業で振り分けていることを把握しているでしょう。現場の人がすでに気づいていることを確かめるために、プロセスマイニングのプロジェクトを一から実施する必要はありません。
プロセスマイニングが役立つのは、全体像が見えにくい場合です。業務が複数のチームやシステムにまたがる場合、例外を予測しにくい場合、あるいは変更前後のプロセスを比較するための根拠が必要な場合です。自動化する業務を決める際の参考にはなりますが、プロセスの問題をすべて自動化プロジェクトに結びつけるべきではありません。
まず押さえておきたい基礎知識:RPA、エージェント型自動化、プロセスマイニング
RPAはデジタル自動化の一種で、画面上でデータを移動させます。ワークフロー全体を動かすプロセス自動化ツールもあります。プロセスの流れを把握しておくと、どちらを選ぶ場合も判断しやすくなります。
これらの用語は、業務の異なる側面を表しています。
RPAボットは、ボタンのクリック、項目のコピー、フォームへの入力、アプリ間のデータ移動など、ユーザーインターフェース上の操作を再現します。手順が決まっている、反復的でルールに基づく作業に適しています。
- **できること:**ユーザーインターフェース上で、反復的でルールに基づく作業を自動化します
- **入力:**定義済みの手順とルール
- **強み:**深いシステム連携なしで、複数のシステムをまたいで動作できます
- **制約:**曖昧な状況や、想定されていないケースへの対応は得意ではありません
プロセスマイニングでは、ITシステムのイベントログデータから業務の流れを再構成します。データに記録されたプロセスを、バリアントや例外も含めて確認できます。
- **できること:**業務プロセスを発見、可視化、監視、分析します
- **入力:**ケースID、アクティビティ、タイムスタンプを含むイベントログ
- **強み:**プロセスの経路、ボトルネック、回避策を明らかにします
- **制約:**構造化されたイベントデータへのアクセスが必要です
詳しくは、プロセスマイニングとは何かをご覧ください。RPAを初めて知る方は、RPAの基礎解説もご確認ください。
エージェント型自動化は、もう1つの方法です。RPAボットは指定された手順に従いますが、エージェントは目標を受け取り、実行する操作を選びます。そのため、プロセスを明確に記述しておくことが、これまで以上に重要です。エージェントに業務を任せる前に、プロセスのバリアントや例外、正しい結果がどのようなものかを把握する必要があります。同じ根拠は、その作業がそもそも自動化に適しているかどうかを判断する際にも役立ちます。
プロセスマイニングが力を発揮する場面
ワークショップや1つのチームの視点だけでは得にくい根拠が必要な場合、プロセスマイニングは業務プロセスの自動化を検討する助けになります。
- **チームやシステムをまたぐ反復作業を見つけます。**同じデータを複数の場所に入力していたり、引き継ぎのたびに手戻りが発生していたりすることがあります。プロセス全体のデータを見れば、各チームが自分たちの作業しか把握していないと見落としやすいパターンも明らかになります。
- **作業量を数値で把握します。**各ステップの発生頻度と所要時間を測定します。自動化の可能性を一般論で語るよりも、対象となる作業量を具体的に見積もれます。
- **例外を把握します。**バリアントを比較するまでは、一貫しているように見える作業もあります。例外率を確認すれば、共通の経路をたどる作業と、別の対応が必要な作業の割合がわかります。
- **導入後の変化を確認します。**変更前後のプロセスのパフォーマンスを比較します。想定どおりに流れが変わったか、新たなボトルネックや逸脱が生じていないかを確認できます。
- **自動化しない作業を見極めます。**例外が多すぎる、判断が必要、発生頻度が低く労力に見合わないなどの理由から、自動化に適さない作業が見つかることもあります。ボットを作らないという判断につながったとしても、有益な発見です。
自動化以外にも根拠を役立てる
プロセスマイニングは、プロセスの発見、監視、適合性チェック、改善に役立ちます。自動化候補の調査は用途の1つであり、すべてではありません。
頻度×標準化度×件数:候補を絞り込む基準
まずは4つの要素を確認します。頻度、標準化度、件数から、反復可能な作業かどうかを判断できます。処理時間からは、作業にかかる労力がわかります。これらは候補を絞るための基準であり、削減効果を保証するものではありません。
| 基準 | 確認すること | 重要な理由 | 確認するデータ |
|---|---|---|---|
| 頻度 | そのステップはどのくらいの頻度で発生しますか? | 発生頻度が低い作業は、自動化にかかる労力に見合わない場合があります | アクティビティの件数、月ごとのケース数 |
| 標準化度 | バリアントはいくつありますか? | ボットには定義された経路とルールが必要です | バリアント数、共通の経路をたどるケースの割合 |
| 件数 | 共通の経路をたどるケースはいくつありますか? | 総件数が多くても、反復可能な作業は一部に限られる場合があります | 最も多いバリアントのケース数 |
| 処理時間 | 1件あたりの作業に、担当者はどのくらい時間をかけていますか? | 自動化の対象になり得る作業量がわかります | アクティビティごとの所要時間。現場の知識と照らし合わせて確認します |
チームで合意した定義に基づき、各要素を1〜5で評価します。スコアを掛け合わせて候補の順位付けに使うことはできますが、その結果を事業性の根拠とみなさないでください。1つの要素の高得点で、ほかの要素との適合性の低さを補うことはできません。頻度が高くても例外が多い作業は、再設計が必要かもしれません。標準化されていても発生頻度が低い作業は、自動化に値しない場合があります。
追加の確認項目として、例外率を使います。評価対象の経路から外れるケースがどのくらいあるかを示します。例外率が高い場合は、候補から自動的に除外するのではなく、その理由を調べる必要があります。
自動化の可能性を計算する
共通の経路をたどる可能性がある作業の件数と処理時間を見積もります。簡易的なスクリーニング計算は次のとおりです。
addressable hours = instances per month × handling time × (1 − exception rate) たとえば、与信確認が月に4,200回発生し、1回あたり6分かかるとします。処理時間の合計は420時間です。ケースの18%が別の経路をたどる場合、共通の経路に限った作業時間は月に約344時間と見積もれます。
これは対象となる作業量の見積もりであり、削減効果の予測ではありません。例外対応、自動化の監視、構築や保守に必要な時間は含まれていません。事業性を検討する前に、プロセスチームと見積もりを確認し、こうしたコストや責任も考慮してください。
プロセスデータがこの分析にどう役立つかを知りたい方は、ProcessMindのプロセスマイニング機能をご覧ください。
正直に考える:プロセスマイニングが不要な場合もあります
自動化する作業の一覧だけが必要であれば、プロセスマイニングは必要以上かもしれません。
プロセスマイニングには、イベントデータの準備と、分析結果を解釈できる人が必要です。単純でよく理解されている作業なら、担当チームと話し合うだけで手順や例外を明確にできる場合があります。そのうえで、ボットを作るかどうかを判断できます。
たとえば、買掛金チームがメールからERPへ請求書データを転記する作業に時間がかかっていると把握しているなら、その作業の存在を確かめるためにイベントログを分析する必要はないかもしれません。ただし、自動化する前にルールや例外、リスクを確認する必要があります。
プロセスが複数のチームやシステムにまたがる場合、実際の流れが文書化された内容と異なる場合、あるいは変更を評価するためのベースラインが必要な場合は、プロセスマイニングがより役立ちます。すべての自動化プロジェクトの前提条件にするのではなく、実際の疑問に答えるために利用してください。
プロセスマイニングは自動化候補を見つけるのにとても役立ちますが、最初にプロセスをモデリングするほうが効果的な場合も少なくありません。現場の担当者は、分析をしなくても問題点を指摘できます。話し合いをうまく進めれば、自動化の課題はデータよりもコミュニケーションに移っていきます。
プロセスマイニングでわかるのは自動化候補だけではありません
「RPAのためのプロセスマイニング」という捉え方では、候補を探すためのツールという印象に偏ることがあります。プロセス全体を理解し、改善するためにも役立ちます。
- **プロセスのパフォーマンスを監視します。**サイクルタイム、逸脱、フローの変化を追跡できます。プロセスの継続的な監視方法をご覧ください。
- **適合性を確認します。**実際のプロセス経路を想定したプロセスと比較できます。コンプライアンスやガバナンスの取り組みに役立ちますが、うまく機能していないプロセスを修正するものではありません。
- **根本原因を調査します。**注文が遅れている場合は、仕入先、地域、チーム、プロセスバリアントごとにケースを比較し、遅延の発生箇所を確認できます。
- **自動化の前に再設計します。**プロセス分析により、削除できる手順や減らせる引き継ぎ、簡素化できる承認を特定できます。現在のプロセスをそのまま自動化するより、簡素化したプロセスを出発点にする方が適切な場合があります。
- 変更をモデリングしてシミュレーションします。ProcessMindでは、プロセスの変更をモデル化し、実装前にその影響をシミュレーションできます。
自動化は選択肢の1つです。まず問題を把握し、プロセスを再設計するか、自動化するか、現状のままにするかを判断してください。
実践的な進め方:ステップごとに確認
プロセス分析を自動化の判断につなげるには、次の手順で進めます。
- **プロセスを把握します。**バリアント、ボトルネック、手戻り、例外を確認します。
- **まずプロセスを改善します。**自動化を構築する前に、不要なステップや引き継ぎをなくせるか検討します。
- **適した作業を候補に絞ります。**頻度、標準化度、件数、処理時間、例外率を比較します。
- **労力とリスクを評価します。**関係するシステム、作業のルール、例外への対応方法を確認します。
- **結果を監視します。**変更後のプロセスをベースラインと比較し、予想外の影響があれば調べます。
- **業務の変化に応じて見直します。**新しい方針やシステム、プロセスのバリアントによって、自動化が適切かどうかは変わることがあります。
監視の手順については、プロセスの継続的な監視に関するガイドをご覧ください。自動化の前に目標とするプロセスを文書化するには、BPMNモデリングをご確認ください。
自動化の前にプロセスを確認する
プロセスを自動化しても、根本的な問題が解決するわけではありません。まず作業を簡素化できるか確認し、そのうえで残るステップが自動化に適しているかを評価してください。
確認に使える候補一覧を作成する
このテンプレートを使って、自動化候補となるステップを比較します。選択肢の順位を付ける前に、根拠となる情報を記入してください。空欄や不確かな項目は、候補に適していると決めつける理由ではなく、調査すべき点です。
| ステップ | 月あたりの件数 | バリアント数 | 最多バリアントの割合 | 処理時間 | 例外率 | 対象となる作業時間 | 構築の労力 | 関係するシステム | 初期評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 与信確認 | 4,200 | 6 | 82% | 6分 | 18% | 約344時間 | 中程度、1つのシステム、1組のルール | ERP、信用調査機関 | レビュー候補 |
| 請求書の手作業での照合 | 1,100 | 14 | 41% | 11分 | 59% | 約83時間 | 高い、多数のバリアント、データ品質に問題 | ERP、銀行データ連携 | 調査して再設計 |
| 月末レポートの作成 | 12 | 3 | 90% | 3時間 | 10% | 約32時間 | 低い | レポートツール | データの作成元を自動化するほうがよいか確認 |
これらの例は、レビューの進め方を示すものであり、削減効果の予測ではありません。実際のデータを使い、作業を担当する人と前提条件を確認してください。
候補一覧をより役立つものにするため、次の3点を実践してください。
- 順位を付ける前に、すべての項目を記入します。頻度だけを見ると、実際以上に魅力的な作業に見えることがあります。
- 関係するシステムの数を記録します。システムの境界ごとに、導入やサポートにかかる労力が変わることがあります。
- 「まず再設計する」「自動化しない」も有効な結論として残します。最善の判断は、作業をなくすことや、進め方を変えることかもしれません。
ベンダー選び:オールインワンか、最適な製品の組み合わせか
RPAとプロセスマイニングの両方を1つのプラットフォームで提供するベンダーもあります。UiPathはRPAから始まり、後にプロセスマイニングを追加しました。Celonisはプロセスマイニングを起点とし、自動化ベンダーと提携しています。それぞれに異なる利点とトレードオフがあります。
- プロセスマイニングのインサイトと自動化ワークフローを、より緊密に連携できます
- ベンダーとの窓口を一本化できます
- 共通のインターフェースを使えます
検討すべきトレードオフ:
- プロセスの再設計が適している場合でも、プラットフォームが自動化を重視する可能性があります
- 後から一部の機能を変更したくなったとき、選択肢が限られる場合があります
- 各機能が要件にどの程度合うかを確認してください
- それぞれの役割に合ったツールを選べます
- ニーズの変化に応じて、製品を柔軟に変更できます
- プロセス分析を特定の自動化方式に結びつけずに済みます
検討すべきトレードオフ:
- 連携により多くの労力がかかる場合があります
- 複数のベンダーとの関係を管理する必要が生じる場合があります
ベンダー比較の例を詳しく知りたい方は、UiPathとProcessMindの比較分析をご覧ください。適切な選択肢は、既存のシステム、チーム、要件によって異なります。プロセスマイニングと自動化の機能を分けて比較し、必要な判断を支援できるプラットフォームかどうかをご確認ください。
ProcessMindが適する場面
ProcessMindでは、プロセスマイニング、プロセスモデリング、シミュレーションを1つにまとめています。次のような用途に利用できます。
- 発見イベントデータを使って、プロセスの実際の流れを明らかにします。
- 分析バリアント、ボトルネック、逸脱を分析します。
- 文書化BPMNモデリングでプロセスを文書化します。
- シミュレーション導入前に、変更案をシミュレーションします。
- 監視プロセスのパフォーマンスを継続的に監視します。
ProcessMindは、プロセスの理解と改善策の評価に役立ちます。自動化すべき内容を決めたり、代わりに自動化を実行したりするものではありません。分析結果をもとに、自動化の必要性を説明したり、プロセスを再設計したり、自動化しないと判断したりできます。
プロセスマイニングの導入効果を幅広く検討するには、プロセスマイニングのビジネスケースを作成する方法をご覧ください。必要なデータについては、プロセスマイニング用イベントログの作成方法をご確認ください。
よくある誤解を解く
誤解1:「プロセスマイニングで自動化計画が提示される」
プロセスマイニングでは、データに記録されたプロセスの流れを確認できます。非効率な箇所、ボトルネック、逸脱を明らかにできます。分析結果を解釈し、自動化するか、再設計するか、現状のままにするかは、チームが判断する必要があります。ワンクリックで自動化計画ができるという主張は、慎重に受け止めてください。
誤解2:「プロセスマイニングは主にRPAボットの分析に使う」
プロセスマイニングは、ボットを含むプロセス全体の評価に役立ちますが、ボットの操作をすべて説明するものではありません。ボットが定義済みのスクリプトに従う場合は、その動作を把握するためにスクリプトとログを確認してください。自動化されたステップがエンドツーエンドのプロセスにどう組み込まれているかを確認するには、プロセスマイニングを利用します。
誤解3:「自動化プロジェクトの前には必ずプロセスマイニングが必要」
必ずしも必要ではありません。作業が単純でよく理解されており、例外も明確であれば、プロセスマイニングを行わずに進められる場合があります。プロセスが複雑な場合や、どのチームも全体像を把握できていない場合は、プロセスマイニングがより役立ちます。
誤解4:「自動化とプロセスマイニングには同じデータアクセスが必要」
同じではありません。RPAはユーザーインターフェースを通じて動作するため、画面やアプリケーションへのアクセスが必要になる場合があります。プロセスマイニングには、業務システムから取得した構造化イベントデータが必要です。必要なデータ、アクセス権、スキルはそれぞれ異なることがあります。
両方を同時に計画する場合は、こうした違いを調整する必要があります。問い(「何をスクリプト化できるか」と「プロセス全体で何が起きているか」)、担当者、データへのアクセス方法がそれぞれ異なります。
自動化候補ではなく、根拠から始める
プロセスマイニングは、自動化候補の順位付け、対象となる作業量の見積もり、プロセス全体の変化の確認に役立ちます。自動化が次に取るべき手段ではないとわかることもあります。それも有益な結果です。目標は作業をより多く自動化することではなく、適切な判断をすることです。
変更の前後でプロセスの健全性を評価する方法をご覧ください。
実際のデータから例外率を把握する
プロセスデータを使って、業務のうちどれだけが一般的な経路をたどるかを確認できます。
構築予定のプロセスを確認できるよう、自動化の前に目標とする状態を設計しましょう。
午後のうちに自動化候補の規模を見積もる
1回のエクスポートから、発生頻度、バリアント、処理時間を測定できます。これらを測るためにRPAライセンスを用意する必要はありません。