プロセスマッピングとは?種類・記号・事例を解説
プロセスマッピングの進め方から、9種類のマップ、プロセスに合った記号・ツール・テンプレートの選び方まで解説します。
プロセスマッピングとは?意味、種類、事例
**プロセスマッピングとは、業務のアクティビティや判断、引き継ぎを視覚的に整理し、文書化する手法です。**業務の開始から結果に至るまでの流れを、関係者間で共有できます。
プロセスマッピングは、ワークショップで作成する簡単なフローチャートから、詳細なBPMN 2.0図までさまざまです。適切な形式は、説明したい内容、マップを読む人、プロセスに必要な詳細度によって異なります。このガイドでは、9種類のプロセスマップを比較し、一般的な記号を説明したうえで、実践的な6つの手順を紹介します。
プロセスマッピングが必要な理由
プロセスマップを使うと、プロセスの手順や担当者が見えるようになります。プロセスの変更、チームのトレーニング、システムの選定を行う前に、関係者間の認識のずれを見つけるのに役立ちます。
マップを次のように役立てられます。
- **プロセスの進め方について合意する。**関係者が同じ手順、判断、引き継ぎを共有できるようにします。
- **対象範囲を明確にする。**開始点と終了点を定め、分析の焦点を絞ります。
- **担当者を可視化する。**各アクティビティを担当するロール、チーム、システムを示します。
- **遅延や手戻りの可能性を見つける。**待ち行列、繰り返される手順、不明確な判断、不要な引き継ぎを確認します。
- **トレーニングやオンボーディングを支援する。**業務の進め方を視覚的に確認できる資料を用意します。
- **現在の状態を文書化する。**変更を提案する前に、現時点でのプロセスの認識を記録します。
- **システムや組織の変更に備える。**影響を受ける可能性がある手順、ロール、依存関係を特定します。
- **改善の出発点をつくる。**マップを使って問いを整理し、次に必要な根拠を決めます。
マップはプロセスを表すのに役立ちますが、すべてのケースが同じ経路をたどる証拠ではありません。実務担当者と内容を確認してください。各経路の発生頻度や手順にかかる時間を知るには、図だけでなくプロセスデータも必要です。
プロセスマッピングの記号と表記法とは?
プロセスマッピングの記号は、アクティビティ、判断、イベント、流れの方向を示すための視覚的なルールです。記号を統一すると、それぞれの形の意味を推測しなくても、読み手がマップを理解しやすくなります。
基本的なフローチャートでは、一般に次の記号を使います。
| 記号 | 一般的な意味 | 表す内容 |
|---|---|---|
| 楕円または角丸の図形 | 開始または終了 | プロセスの開始点または終了点 |
| 四角形 | アクティビティまたはタスク | 各ステップで行う作業 |
| ひし形 | 判断 | 条件によって経路が分かれる箇所 |
| 矢印 | 流れの方向 | ステップ間の順序 |
| 平行四辺形 | 入力または出力 | ステップに入る、またはステップから出る情報や物品 |
こうしたルールは、チームやツールによって異なる場合があります。読み手が記号を別の意味に捉える可能性がある場合は、簡単な凡例を加えてください。
BPMN 2.0では、イベント、アクティビティ、ゲートウェイ、フローなど、プロセスの動きを文書化するための正式な要素が定められています。チーム間で表記法を統一したい場合や、単純なフローチャートより詳しい内容を図に示す場合に役立ちます。BPMN要素と表記法については、BPMN 2.0ガイドをご覧ください。
ビジネスプロセスモデリングとは?
ビジネスプロセスモデリングとは、プロセスを理解、分析、共有、改善できるよう、構造化して表現することです。モデルには、アクティビティ、ロール、判断、イベント、それらの関係を示せます。
プロセスマッピングとプロセスモデリングは関連する用語で、同じ意味で使われることもあります。このガイドでは、プロセスマッピングをプロセスの視覚的な文書化、プロセスモデリングを分析などに役立つ詳細度と構造で表現することとしています。この違いは目的と詳細度に関するもので、2つの異なる作業を厳密に区別するものではありません。
モデルは、簡易的なものにも、BPMN 2.0などの標準を使ったものにもできます。表記法を使うだけで、図の正確さが保証されるわけではありません。対象範囲について合意し、プロセスをよく知る人から情報を集め、結果を検証する必要があります。
プロセスマッピングとプロセスモデリングの違い
プロセスマッピングでは通常、「何が、どの順序で起こり、誰が関わるのか」という実務上の問いから始めます。プロセスモデリングではさらに、イベント、データ、例外、プロセス要素間の関係など、詳細な情報を表現できます。
| 観点 | プロセスマッピング | プロセスモデリング |
|---|---|---|
| 主な目的 | プロセスを理解し、話し合いやすくする | 分析などに使えるよう、プロセスを構造化して表現する |
| 一般的な詳細度 | 手順、判断、順序、担当者 | イベント、データ、例外、より正式な関係を含む場合がある |
| 一般的な形式 | フローチャート、スイムレーンマップ、SIPOC図、バリューストリームマップ | BPMN 2.0などの構造化されたモデリング表記法 |
| 適した用途 | ワークショップ、認識の共有、現在の状態の文書化 | 詳細な分析、一貫性のある文書化、チーム間の情報共有 |
| それだけでは確認できないこと | マップが実際のすべてのケースに当てはまるか | モデルが正確か、実際のパフォーマンスを反映しているか |
簡単なマップから始め、読み手や目的に応じて詳細を加えることができます。詳細なモデルが常に優れているとは限りません。プロセスが単純な場合、表記を増やすとかえって図が読みにくくなることがあります。
プロセスモデリングとプロセスマイニングがどのように補完し合うかについては、マッピングとマイニングの組み合わせ方をご覧ください。
どの種類のプロセスマップを選ぶべきですか?
答えたい問いに合わせてマップを選びます。フローチャートは手順の順序を示し、スイムレーンマップは担当者と引き継ぎを可視化します。SIPOC図は対象範囲を大まかに示します。ほかにも、顧客価値、プロジェクトの進行時期、問題の原因候補に焦点を当てる形式があります。
1. フローチャート
フローチャートでは、アクティビティと判断を順序に沿って示します。手順の数が多くないプロセスを、簡潔で読みやすく把握したい場合の出発点として適しています。
**適した用途:**単純なプロセスの説明、現在の状態についての話し合い、判断によって経路が変わる箇所の特定に使います。
2. BPMN 2.0図
BPMN 2.0図では、標準化された表記法を使って、プロセスの手順、イベント、判断、フローを表します。基本的なフローチャートより詳しい情報を記録でき、読み手が共通の視覚表現で理解できます。
**適した用途:**複数のチームが読み、話し合える詳細で標準化されたモデルが必要な場合に使います。ProcessMindではBPMN 2.0を表記法として採用しています。詳しくはBPMN 2.0ガイドをご覧ください。
3. バリューストリームマップ
バリューストリームマップでは、製品、サービス、依頼がプロセスを通じてどのように進むかを示します。顧客価値につながる手順と、その間にかかる時間に注目します。
**適した用途:**特にリーン改善の取り組みで、業務の流れ、待ち時間、価値の提供状況を確認する場合に使います。バリューストリームマッピングのガイドをご覧ください。
4. SIPOC図
SIPOCは、Suppliers(供給者)、Inputs(インプット)、Process(プロセス)、Outputs(アウトプット)、Customers(顧客)の略です。誰がインプットを提供し、プロセスが何を生み出し、誰がアウトプットを受け取るかを大まかに把握できます。
**適した用途:**詳細な手順を文書化する前に、プロセスの境界について合意したり、関係者間の認識をそろえたりする場合に使います。
5. スイムレーン図
スイムレーン図では、プロセスをレーンに分け、各レーンでロール、チーム、部門、またはシステムを表します。手順の順序と担当者を同時に示し、レーンをまたぐ流れによって引き継ぎも確認しやすくなります。
**適した用途:**複数のロールやシステムが関わり、担当者や引き継ぎの把握が必要な場合に使います。BPMN 2.0では、ParticipantsとLanesでこの構造を表します。詳しくはプールとスイムレーンのリファレンスをご覧ください。
6. ガントチャート
ガントチャートでは、アクティビティを時間軸に配置し、予定開始日、所要期間、依存関係を示します。繰り返し行われる業務プロセスの詳細なマップというより、主にスケジュールを管理するための表示形式です。
**適した用途:**予定や依存関係が決まっているアクティビティを含むプロジェクトの計画と進捗管理に使います。
7. PERT図
PERT図では、プロジェクトのアクティビティと依存関係を示し、作業の順序を把握できます。繰り返し行われる業務プロセスの文書化ではなく、プロジェクトの計画に焦点を当てます。
**適した用途:**プロジェクト計画における依存関係や、考えられる進行経路を把握する場合に使います。
8. 特性要因図(フィッシュボーン図)
フィッシュボーン図では、問題の原因候補をカテゴリに分け、中心となる問題の周囲に整理します。結果が起きている理由について、チームで話し合う際に役立ちます。
**適した用途:**原因候補を調べ、検証する前に考えを整理したい場合に使います。フィッシュボーン図だけで原因を特定できるわけではありません。
9. ワークフロー図
ワークフロー図では、タスクや情報がプロセス内をどのように進むかを示します。幅広い意味で使われるため、詳細度や表記法はさまざまです。
**適した用途:**より正式な表記法を取り入れずに、タスクの順序や引き継ぎを実務に沿って把握したい場合に使います。
| マップの種類 | 参考情報 |
|---|---|
| フローチャート | 概要 |
| BPMN 2.0図 | 概要 |
| バリューストリームマップ | 概要 |
| SIPOC図 | 概要 |
| スイムレーン図 | 概要 |
| ガントチャート | 概要 |
| PERT図 | 概要 |
| フィッシュボーン図 | 概要 |
| ワークフロー図 | 概要 |
ほかにもあるマップの種類
プロセスの業務で使われる形式は、ほかにも3つあります。上記の9種類ほど一般的ではありませんが、それぞれ異なる問いに答えるのに役立ちます。
- **マインドマップ。**プロセスの範囲を整理し、構造化する前に情報を集める放射状の図です。
- **組織図。**プロセスの流れではなく指揮命令系統を示します。手順の担当者を確認したい場合に役立ちます。
- **決定木。**判断の根拠となるルールを枝分かれで示します。フローチャートの判断箇所と組み合わせて使えます。
スイムレーンプロセスマップとは?
スイムレーンプロセスマップでは、担当するロール、チーム、システムごとに手順を分けます。プロセスの流れでアクティビティの順序を、レーンで担当者を示します。流れが別のレーンに移る箇所が引き継ぎです。
購買依頼を例に考えてみましょう。
| 手順 | レーン | 引き継ぎ先 |
|---|---|---|
| 購買依頼を起票する | 依頼者 | 購買担当者へ |
| 予算を確認し、仕入先を選ぶ | 購買担当者 | 承認者へ |
| 基準額を超える依頼を承認する | 承認者 | 購買担当者へ戻す |
| 注文書を作成する | 購買担当者 | 財務担当者へ |
| 請求書と注文書を照合する | 財務担当者 | 不一致がある場合は購買担当者へ戻す |
この図を使うと、具体的な問いを立てやすくなります。ロール間のどこで業務が滞っていますか?判断の担当者は誰ですか?その手順は配置したレーンで正しいですか?
複数のロールやシステムが関わり、担当者や引き継ぎが重要な場合は、レーンを使います。1つのロールだけで処理するプロセスなら、単純なフローチャートのほうが読みやすいことがあります。2つのレーンがまったく関わらない場合は、別々のプロセスを1つの図にまとめていないか検討してください。
レーンの基準は統一してください。部署、個人、システムが混在していると、マップの解釈が難しくなります。プロセスの進み方に影響する例外経路も含めてください。想定された経路だけを示すマップでは、最も多くの疑問が生じるケースが抜け落ちることがあります。
プロセスマッピングに使うツールとテンプレート
プロセスマッピングのツールには、ホワイトボードや付箋から、図の作成ソフトやBPMNモデラーまでさまざまなものがあります。作成するマップの種類、確認する人数、継続的な更新の必要性に応じて選んでください。
使いやすいツールを選ぶ際は、次の点を確認します。
- 手順、判断、接続を追加・並べ替えられる。
- 複数のロールが関わる場合に、担当者を示せる。
- 確認が必要な人とマップを共有できる。
- プロセスの変更に合わせて、バージョンと担当者を明確に保てる。
- チーム間で図を読み取る必要がある場合に、表記法を統一できる。
プロセスマッピングのテンプレートを使うと準備時間を短縮できますが、テンプレートに合わせてプロセスを決めてはいけません。マップの種類に合ったテンプレートから始め、対象範囲に合わせてラベルや構成を変更してください。フローチャートのテンプレートはSIPOC図の代わりにはならず、プロジェクトのスケジュールもプロセスマップとは異なります。
このページの事例を見比べると、テンプレートを選ぶ際に各形式の違いを確認できます。より正式な図の作成環境をお探しの場合は、モデリングワークスペースをご覧ください。ProcessMindでは、プロセス情報を整理するためのプロセス文書化も利用できます。
6つの手順でプロセスマップを作成する方法
役立つマップを作成するには、明確な問いと対象範囲を決めることから始めます。プロセスをよく知る人と次の6つの手順を進め、参考資料として共有する前に内容を検証してください。
- **対象のプロセスと目的を決めます。**マップを使って何を把握したいのかを明確にします。たとえば、責任範囲の確認、現状の文書化、引き継ぎの検討などが考えられます。
- **開始点と終了点を決めます。**プロセスの開始となるイベントと、終了時の状態を定義します。境界を明確にすると、関連するあらゆるアクティビティまでマップが広がるのを防げます。
- **目的に合ったマップの種類を選びます。**単純な順序にはフローチャート、役割や引き継ぎの整理にはスイムレーンマップ、対象範囲の合意にはSIPOC図を使います。標準化された詳細なモデルが必要な場合は、BPMN 2.0を選びます。
- **関係者から各ステップの情報を集めます。**実際に業務を行う人に、判断や例外、入力、出力も含めて、何が起きるのかを説明してもらいます。手順書や管理者の説明だけに頼らないようにします。
- **マップを作成し、内容を確認します。**ステップを順番に並べ、判断箇所に明確なラベルを付け、記号の使い方を統一します。作成した案を、プロセスを実行する人や責任者に共有します。抜けている点や分かりにくい点、実際の業務との違いがないか確認します。
- **管理責任者と見直し時期を決めます。**マップの管理担当者と確認時期を記録します。プロセスが変わったら更新し、対象となる人が見つけやすい場所に最新版を保管します。
最初の版では、対象を絞り込みます。マップで答えたい問いの解決に役立つ場合に、詳細を追加します。長い説明がないと図を理解できない場合は、レイアウトを簡潔にするか、ラベルを分かりやすくします。
プロセスマッピングでは分からないこと
プロセスマップが示すのは、ある時点で把握しているプロセスの姿です。想定された手順や報告された手順は説明できますが、各経路がどのくらいの頻度で発生するのか、案件がどれだけ待つのか、実際の業務がマップどおりに進んでいるのかまでは、それだけでは分かりません。
プロセスが頻繁に変わる場合、例外が多い場合、複数のシステムにまたがる場合には、この制約が問題になります。管理者がいない、または実際の業務と照らし合わせて確認されていないと、マップは古くなります。最近見直されたマップであっても、実際にたどられるすべての経路ではなく、想定された経路を示していることがあります。
プロセスマッピングは、共通認識をつくり、関係者が把握しているプロセスを文書化するために使います。システムに関連するイベントが記録されている場合は、プロセスマイニングでその記録を分析し、実際のプロセスの流れを確認できます。マップとプロセスデータを比較すると、想定との違いを見つけ、さらに調べるべき点を判断しやすくなります。
この2つの手法は、それぞれ目的が異なります。マップは目で見て確認できる資料となり、プロセスマイニングは記録されたイベントに基づく根拠を示します。組み合わせることで、文書化した内容を実際に観測されたプロセスの動きと結び付けられます。詳しくは、プロセスマイニングとは、またはプロセスの分析方法をご覧ください。
プロセスマイニングのベンダーは、ホワイトボードを囲むワークショップはもう時代遅れだと言うことがあります。私たちはそう考えていません。紙を使ったセッションは、参加者が話し合い、認識をそろえるきっかけになります。その時間には価値があります。ただし、話し合うのはプロセスの概要までにしましょう。細部に踏み込む段階では、システムを使うほうが適しています。
プロセスマッピングの始め方
まずは1つのプロセスと1つの問いから始めます。対象者に合ったマップの種類を選び、プロセスの範囲について合意したうえで、実際に業務を行う人に作成案を確認してもらいます。プロセスが変わったときに見直せるよう、管理責任者も決めておきます。
概要を簡潔に示す場合は、フローチャートから始めます。責任範囲や引き継ぎが中心となる場合は、スイムレーンを使います。標準化された詳細な図が必要な場合は、BPMNモデリングワークスペースをご覧ください。
マップを使うと、関係者の共通認識をつくれますが、自動的に最新の状態が保たれるわけではありません。プロセスデータを使って、文書化したプロセスと実際の業務を照合する方法を確認し、実態に即したプロセスマップを維持しましょう。